主役は「ベンチ外」の3年生麻溝台・相模原弥栄 「引退試合」のプレゼント

2022/07/07

試合終了後は両校の3年生が揃って記念撮影

 7月9日に開幕する高校野球神奈川県予選を目前に控えた6月29日、麻溝台高校(南区北里)と相模原弥栄高校(中央区弥栄)野球部のベンチ入りから外れた3年生の「引退試合」が、サーティーフォー相模原球場で開催された。

 引退試合は弥栄高(鶴岡英一監督)が5年前から実施しており、昨年は上鶴間高校と対戦した。今年は麻溝台高(阿川弘之監督)でベンチ入りできない3年生がいることを知った鶴岡監督が阿川監督に打診、実現した。

ベンチ入り選手がスタンドから応援

 麻溝台高にとって試合当日は大会直前に加え期末試験の真っ最中。弥栄高からの打診を受け、阿川監督は試合の参加・不参加を部員全員で決めさせた。阿川監督は「一人でも反対ならやらない」つもりだったが、全員賛成。鈴木暢主将らは「このような機会を設けてもらえ有難い」と感謝。話を聞いた保護者会会長の内藤圭一さんも「とても良いこと」と喜んだ。

 猛暑の中、ナイターで行われた試合は、ベンチ入りから漏れた7人の3年生を中心にメンバーを組み、1・2年生がサポート。大会でベンチ入りする3年生と揃いの水色のTシャツを着た保護者らがスタンドから声援を送った。試合は3対10で敗れたが、3年生は最後のプレーを楽しんだ。

 この日試合に出場した3年生の小林奏音(かなと)さんは、ベンチ入りメンバーが発表された日「納得できたが悔しくて家で一人泣いた」という。ただすぐに気持ちを切り換え、両親には翌日からチームのサポートに回ると宣言した。試合は「楽しいのと情けないのと半々」と正直な気持ちを吐露したが「自分たちのために準備してくれて嬉しかった」と感謝の気持ちを口にした。この日は両親がスタンドから声援。母・真理さんは「試験中にも関わらず皆集まってくれるなど仲間に恵まれた。本人は葛藤があったようだが、大会では応援団をやると張り切っていた」と溢れる涙を拭った。

 麻溝台高は11日(月)、サーティーフォー保土ケ谷球場で関東学院高と対戦する。