新規就農「盛り上げたい」 連絡会 朝市出店契機に

2022/09/08

倉庫の前に立つ和泉さん

 新規就農を希望する人がいる一方、離れてしまう人も少なくないという。そのような状況の中、相模原市の新規就農者の集まりがこの夏、初めて市民朝市に出店した。6月度以来、週に1回の開催に継続的に参加し一定の販売実績をあげている。「これを機に盛り上げていきたい」と代表者は話す。

退会多い時期も

 朝市への出店を始めたのは、相模原市農業協同組合の中の組合組織として10年ほど前に誕生した相模原市新規就農者連絡会。会長を務める緑区大島の生産者、和泉大樹さん(44)によると発足時15人ほどだった会員は一時期、5人にまで減った。現在10人にまで持ち直したがここ5年ほどは退会者が多かったそう。

 ブームもあり農業に興味を示す「若い世代」は少なくない。和泉さんによると、これまで見てきた市内の新規就農者はだいたい35歳から40歳代で、会社勤めから切り替える場合が多い。ただ、勉強をして始めてみても続かない人もいる。和泉さんはその理由のひとつとして「農業は実際、経営が難しいから」と話す。農産物の生産に集中しすぎて、「どうやったら売れるのか」などの経営の視点にまで頭が回らず、行き詰まってしまうケースがよくあるという。

 和泉さんはかつて住宅設備機器の会社を経営していた。2011年、37歳で新規就農し、現在は市内に合計10ヘクタールの農地を有する。従業員を雇い、生産物は近隣スーパーや宅食業者に卸している。3年前に新築した倉庫は同業者の生産物を管理する「配送センター」の役割も兼ね備え、地域の農業の発展を支えている。これらの実績や経験は、各方面から注目を集めセミナーで講師を務めることも。「人と話すのが苦手だからと農業を始めようとする人もいる。だけど、人と話せないでどうやってできた野菜を売るのか」。セミナーでは経営の大切さも説明するという。

交流活発に

 今回の朝市への出店は市の農政活動への積極的な貢献と共に、新規就農者同士のつながりを深める目的もある。「会議で週に1回集まるのは難しい。ただ、こういった場だとコミュニケーションは気軽にとれる」と和泉さんは同じブースで会話を楽しみながら生産物を販売することに成果を感じている。それが相模原市の次世代の農業のための大きな動きに発展すればと期待する。

 市農政課によると市内の新規就農者(利用権設定などをしている就農している農業者)は5年前の2017年が10人。18年は5人、19、20年はそれぞれ3人で21年は11人だった(今年3月末時点)。