相模原出身の棋士で、名人位の芝野虎丸さんが、1月12日(木)から始まる棋聖戦に初挑戦する。芝野名人は「見てくださる方が楽しんでくれたら」と静かに闘志を燃やす。
芝野さんは昨年11月3日、3勝3敗で迎えた第47期名人戦最終第7局で、井山裕太三冠を破り3期ぶりに名人位を奪還した。「ずっとタイトル戦で勝てておらず、このまま勝てないのでは、という不安もあった」と当時の気持ちを吐露した。19歳で名人位に上りつめ、2020年には王座、十段と最年少で三冠タイトルを獲得した芝野さんだが、その後はタイトル失冠が続いていた。
名人位に返り咲いた約20日後には一力遼棋聖への挑戦権を獲得。今日12日から棋聖位を賭けたタイトル戦に挑む。「一力さんとのタイトル戦は初めて。これまではどちらかが一方的に勝つ試合が多かった。対局は大変な面もあるが、見てくださる方が楽しんでくれたら」と抱負を語った。
家族皆で
芝野さんは1999(平成11)年生まれ。今年11月で24歳の年男だ。
囲碁を始めたのは幼稚園の頃。漫画『ヒカルの碁』が好きな父が「子どもたちにも囲碁をやらせてみよう」と家族全員ではじめたのがきっかけ。「囲碁を始めるきっかけとしては珍しかったと思う」と笑う。
囲碁にのめり込んだのは虎丸さんよりも兄・龍之介さん。虎丸さんは兄についていく形で、鶴園小学校3年生で洪道場に入門した。
5年生で日本棋院の院生となり、谷口中学校2年の14歳でプロになった。当初は「プロになるつもりはなく、いつも遊びたいと思っていた」と話す。 ただ負けず嫌いの性格が「あの相手に負けたくない」「今強くなりたい」というモチベーションにつながり、十代で初(19歳)となる名人位にまで上り詰めた。
普段の生活は囲碁漬けの毎日。毎週月曜と木曜が手合い(対局)の日で、他の日は全て囲碁の勉強に充てる。日本棋院会館(市ヶ谷)での手合いは、朝10時から休憩もとらず夜6時まで、長い時には10時まで続く。
囲碁の勉強方法は主に3つ。実戦対局、プロの棋譜を並べる、問題集を解く。最近はAIが人間より強くなっているため、AIと対戦し、布石の打ち方や形勢の変遷など自身の棋譜を調べることが多いという。
全部勝つつもり
毎年、対局は「全部勝つ」つもりでやっているという芝野さん。タイトル戦だからといって、特別気合を入れたりすることはないが「いい碁を打ちたいという気持ちは強い」と信念を語る。目前に控えた大一番にも「普段通り戦って、普段通りの力を出す」「自分の囲碁が打てるよう目の前の一局一局に負けないよう全力を尽くすだけ」と平常心で臨む姿勢だ。