子どもの自立、支え続ける 創設70年「さがみの里親会」

2023/03/23

活動の様子

 社会的擁護を必要とする子どもたちのための里親制度。制度の主旨を理解し、市内で里親として活動する人たちの集まり「さがみの里親会」が、今年で創設70年を迎えた。制度と合わせ、同会の活動を取材した。

認定・登録まで約半年

 里親制度は、児童福祉法に基づき、里親に子どもの養育をお願いする制度。さまざまな事情で保護者と一緒に生活できない子どもたちを家庭の中で養育するのが里親だ。

 里親になるには、まず児童相談所や、里親制度の普及や里親の支援を行う「家庭養育支援センター」に相談。基礎研修、認定前研修を受けた後「子どもが生活できる部屋があるか」「安定した環境か」などの調査、面接を経て、認定・登録となる。認定・登録の機会は年に2回。研修から登録までには約半年ほどを要する。登録後さらに新任研修を受け、活動開始となる。

 里親には「養育」「専門」「親族」「縁組」の4種類があり、さまざまな事情から保護者と一緒に生活できない子どもたちを児童相談所などから受け入れ、養育する。養育は数日など一時的な場合から、数年にわたる場合もある。5年に1度研修を受け、登録更新する必要がある。専門里親は加えて2年に1度研修を受け、医療的知識などを更新する。

普及・啓発に体験談も

 さがみの里親会は1953(昭和28)年、津久井郡内郷村(現在の相模原市緑区寸沢嵐、若柳)を中心に、約10人の里親の交流を基に「津久井郡里親会」が創設されたのがはじまり。68年に津久井郡に加え相模原市、大和市の里親で「さがみの里親会」となり、2010年の政令指定都市移行を受け、相模原市単独の会となり、現在に至る。事務局は家庭養育支援センターの相模原南児童ホーム(南区新戸905の1)内。年齢制限はないが30〜70代が中心で、現在の会員数は71組。

 活動は里親としての資質向上のための研修や広報紙の発行、イベントなどへ出展しての啓発、ハイキングや新年会など里親と里子の交流を目的とした行事も年3回ほど開催している。コロナ禍でここ数年、宿泊を伴う交流会などは中止が続いており、外部講師を招いての研修会もオンライン開催になっているという。5月のわかばまつりにはブース出展し、啓発活動を予定している。

「親にしてくれた」

 相模原市児童相談所によると2022年12月末時点の要保護児童数は254人。うち里親委託児童数は41人。

 里親会の会長を務める叶登世美さんは、実子ができなかったことから40代前半の頃、縁組を前提に里親登録をした。「子どもを迎えるにあたり、事前に子育てについて勉強したが、実際は大違い。大変だった」と当時を振り返る。それでも大人だけだった生活は付き合いが拡がり、「世界が広がった。私たちを親にしてくれた」と子どもに感謝した。叶さんは会員で唯一、専門里親の資格も取得している。「行政は、子どもが社会的擁護が必要になる前段階の支援はしてくれている。里親は、それでも擁護が必要な子たちのための制度」と理解を求めた。

 なお相模原市では4月にフォスタリング機関(里親養育包括支援機関)設置に向け、準備を進めている。