中山間地域 医療課題解決の一助に 「訪問型」体験会で期待の声

2023/06/08

体験会で行われたデモンストレーション。医師のいる会場と患者・看護師が乗車する移動診療車をつなぎ、オンラインで診療を行った

 相模原市は、中山間地域の医療課題の解決へ向け5月27日、車両を活用した訪問型オンライン診療「モバイルクリニック事業」の体験会を津久井、藤野、相模湖の各地区で開催した。当日はオンライン診療のデモンストレーションも行われ、参加した地域住民からは期待の声が聞かれた。

 モバイルクリニック事業とは、自宅に移動診療車が訪問し、乗車して来る看護師のサポートのもと、車内でオンライン診療を受けられるというもの。

 中山間地域では、高齢化による医療機関への通院困難、医療従事者の安定的な確保などの課題がある。市では住み慣れた地域で安心して医療サービスを受けられるようにするため、2021年から「中山間地域の持続可能な医療の在り方に係る基本方針」の策定に向け検討を進めている。その中で、先進的に取り組んでいる他市の事業について、地域の人とイメージを共有し、理解を深めるために今回の体験会が行われた。

9都市で導入

 同事業の導入により、患者は医療機関に通う負担が減り、医療機関は医師の勤務の効率化を図れ、医師不足の課題解決につなげることができるメリットがある。国内では、昨年度末までに長野県伊那市など、全国9都市が導入している。

画面越しに診療

 旧青根中学校で行われた体験会には12人の住民が参加。事業の説明が行われたほか、会場と会場横に停車していた移動診療車を実際にネットでつなぎ、オンライン診療のデモンストレーションが行われた。高齢のぜんそく患者の診療を想定し、医師が血圧のチェックや問診など、画面越しに診療を進めていった。実際に車両の見学会も行われると、参加者からは「車内は意外と広い」「乗車の際の段差が辛い」などの意見が出ていた。さらに、「オンライン診療になると料金はどうなるのか」「薬の処方はどうする」「オンライン先はどこか」「自宅付近は道が狭いが車両を停める場所がない場合はどうするか」など、参加者が担当者に質問する場面も見られた。

「取り組み必要」

 体験会に参加した女性は、「実際に体験会に参加することで、事業をより身近に感じることができた。地域の実情に合わせてじっくり検討してほしい。患者の状態にもよるが、一つの方法として良い事業だと思う」と話し、車両を見学し終えた男性は「再編で青根診療所の診療が減るとなると、将来を考えてこのような取り組みは必要だと思う」と話した。

 体験会を終え、市の担当者は「今回は相模原市と同じような課題を抱えている伊那市の事例を参考に、理解を深めるために体験会を実施した。この事業だけでなく、医療の選択肢を増やすために、資源を集約して訪問、オンラインと充実させていければ。今後は実証実験なども検討していきたい」と話した。

ニュース提供元:株式会社タウンニュース社