相模原市鳥屋地域 大震災の教訓 歌い継ぐ 「地震峠と十六の瞳」が完成

2023/09/07

完成した譜面を手にする芳晴さん

 関東大震災による土砂災害で16人が亡くなった相模原市緑区の鳥屋地域にある地震峠。被害を歌にして後世に伝え続けようと、緑区名倉在住でシンガーソングライターの芳晴さんが作詞・作曲した「地震峠と十六の瞳」がこのほど完成した。

 関東大震災が起き、鳥屋の馬石地区では揺れの直後に南山が崩れた。その土砂が9件の家を飲み込み16人が生き埋めになった。その後、遺族により慰霊碑が建てられ、現在は自然災害伝承碑地震峠を守る会が維持管理している。

 同会は、地震峠の被害を通じて自然災害の恐ろしさやその教訓を広く伝える役割を掲げる中で、「歌にして歌い続けていくことで、忘れることのないように」と一連の被害について歌を作って残すことができないかを模索。地元でコンサートを開催するなど精力的に活動する芳晴さんに制作を依頼し、話を進めていった。

歌い続けてほしい

 今年4月に依頼を受けた芳晴さんは制作を快諾。頭の中では明治時代につくられた歌謡曲「真白き富士の根」が浮かんだという。「江の島の海岸でボートが転覆して生徒12人が亡くなった事故について先生が作った歌で、それが真っ先に思い浮かんだ」と話す。さらに、7月には実際に地震峠を見学し、遺族と話をして詞や曲のイメージを膨らませていった。遺族らの要望を反映させた歌は8月上旬に完成した。

 歌のタイトルは「地震峠と十六の瞳」。亡くなった子どもの名前が登場し、山津波の表記や、串川、宮ケ瀬、青野原から救助活動に来た様子なども書き綴られた。

 「ヨーロッパの民謡調でみんなで歌えるような歌に仕上がったと思う。やさしい童謡のような歌なので、子どもからお年寄りまで多くの人に歌い続けていってほしい」と願うと、「決して悲しい歌ではなくて、亡くなった人たちが鳥屋の未来をやさしく見守ってくれているという歌。地震災害への注意を喚起できるような歌になっていってくれたらうれしい」と話した。

 完成した歌は9月3日に鳥屋地域センターで開催されたイベント「地震峠100年を迎えて〜教訓を力に未来へ!」で初披露された。当日の歌のお披露目の様子はライブ配信を予定しており、完成した歌はイベント後に芳晴さんのユーチューブチャンネルで公開される予定。詳細は芳晴さんのHP(https://yoshiharu.net/)で確認を。

ニュース提供元:株式会社タウンニュース社