「純相模原産」の日本酒誕生 地元有志と蔵元がタッグ

2022/04/28

完成した純相模原産日本酒「相模灘 相模原×山田錦 純米酒」

 相模原市内の有志と蔵元が手を組み進めていた初の「純相模原産日本酒」がこのほど完成し、5月9日(月)から販売される。構想から5年を経て、酒造会社の「いいものができた」のコメントに、関係者らは歓喜している。

構想から5年

 純相模原産日本酒造りは、緑区在住で市民団体「津久井在来大豆の会」の代表を務める石井好一さんが5年前のある日に晩酌をしていて、「津久井で収穫された米を使って、津久井の酒造で仕込んだ日本酒が飲めたらどんなに素晴らしいだろう」とふと思ったことから始まる。

 石井さんはすぐさま1844年創業の老舗地元蔵元で「相模灘」銘柄の日本酒を手がける久保田酒造に打診。蔵元の快諾を得ると、賛同する仲間とともに計画を進めた。

 「市内には葉山島や藤野、青根(いずれも緑区)など、稲作が盛んな地域も多い。酒米作りにも適しているはず」と考えた石井さんは、緑区在住の農家・依田賢吾さんの協力を得て、2020年に依田さんの水田で酒米の栽培からスタートさせた。相模原の土壌に適している酒米を選び、主に西日本で栽培される品種「山田錦」の種もみ3kgを入手した。依田さんは「西日本と相模原では気候も風土も違うので、細心の注意を払って栽培してきた」と、酒米の生産量を増やし、昨秋ついに酒が仕込めるだけの量に。収穫まで漕ぎ着け、このほど、初の純相模原産日本酒1000本(四合瓶=720ミリリットル)が出来上がった。

5月販売 「楽しみ」 

 石井さんに「一番苦労したことは?」と尋ねると「もともと地域おこしの目的もあったので、借りる田んぼをどこにするか決めるまでかなり大変だったよ」と話し、「シカに稲を食べられて。田んぼ3枚で作ったんだけど、2枚分しか収穫できなかった」と残念そうな表情を浮かべた。

 結局、シカの食害により収穫量が想定より少なくなった上に良質の米のみを選別して仕込んだため、初めての酒は当初の予定より少なくなった。

 石井さんはまだ完成した酒は飲んでおらず、販売前の7日(土)にようやく関係者らで味わうそうで、「そりゃあ楽しみだよ」と笑う。

さわやかな酸味

 久保田酒造にとっては既存ブランド「相模灘」の原料に、相模原産の酒米「山田錦」を使用するのは初めての試みだった。営業部長の太田将志さんは、「これまで山田錦は兵庫県産のものしか使ったことがなかったので造りにかなり気を遣った。依田さんの力が大きい」とほっとした表情を浮かべた。

 「相模灘」に純相模原産ということをアピールする「相模原×山田錦」のラベルが貼られている。太田さんは味について、「白ワインのようなすーっと抜けるさわやかな酸味が特徴」と表現し、「今後さらに品質を高めたい」と意気込む。

 純相模原産「相模灘」は、精米歩合60%の純米酒。四合瓶で定価税込1528円。同酒造の直売所や市内酒店で5月9日(月)に販売開始。

 問い合わせは同酒造【電話】042・784・0045(午前10時〜午後5時)。