区内上鶴間本町の中和田地区で今春から住民ボランティアによる移動支援サービスが開始したされた。社会福祉法人幸会(草薙喜義理事長)から車両貸与の申し出を受けて実現したもの。勾配があり、高齢者への移動支援が課題だった同地区の住民の念願が叶った。
同地区の移動支援「おでかけサポート」は4月1日から開始されている。地域住民で結成したボランティア団体「いこいこ中和田頼られ隊」が運営している。
上河内遊園地を起点にスーパーや医療機関近く、相模大野駅行バスの乗り継ぎ地点などを巡る。運行回数は週に1回。午前10時から午後2時までの間に3便。
車両は社会福祉法人幸会が運営する通所介護事業所のもので、同法人から車両を借りて運行している。開始当初は10人程度だった利用者登録数が、現在約30人に増加している。
利用者の1人、宗形貴介さん(82)は病院のリハビリへ向かうために定期的に乗車している。宗形さんは「歩くと20分以上の距離で、免許は80歳の時に返納している。この猛暑の中ではとても歩けないし、朝はタクシーが捕まらないので困っていた」と話す。
下りで転倒も
同地区は境川沿いに位置し、病院や相模大野駅を利用する場合は勾配28%の急坂を登らなければならない。同団体の代表を務める市川敬子さんは「下りで転び、ケガをしたという話も聞く。移動支援は地域課題だった」と状況を話す。
また10年前、同地区を含む南大野地区まちづくり会議でコミュニティバスの導入について2年間検討したことがあった。当時は予算などの理由から断念。こうした状況を受けて同法人は昨年、地域住民の移動支援のために、車両の貸し出しを地域の関係者に申し出た。同法人特別養護老人ホーム幸園の施設長の田中宣行さんは「地域課題を解決したいという地域貢献の思いで今回提供を申し出た。住民の方たちの外出の機会を作ることができれば」と語る。同団体のメンバーで、コミュニティバス導入の検討にも携わった稲毛易子さんは「利用者の方からも『やっとだね』という声が寄せられる。地域にとって念願の移動支援。ボランティアを増やし、便数も増やすことも検討したい」と語った。
相模原市によると住民主体で交通支援を行う団体は13団体。そのうち区内には7団体がある。