下水道の耐震化工事中に豪雨で作業員が流された事故を受け、相模原市は10月3日、建設事業者や市職員を対象とした緊急安全講習を実施した。ゲリラ豪雨や猛暑、暴風などの気象によって災害が激甚化する中、安全対策をどう見直せばいいのか、この事故から突き付けられた課題は大きい。
事故は9月19日、中央区光が丘1丁目付近で発生した。市が発注した下水道の耐震化工事中、豪雨の影響で管内の水位が上がり、作業員2人が流されて死亡した。
市などの説明をまとめると、地上にいた作業員が降雨を確認後、地下10メートルで作業中の7人に避難を呼びかけたが、2人の脱出が間に合わなかったという。降雨を確認してから30分足らずの間の出来事だった。
また後日、地上と管内の連絡手段となるトランシーバーが故障していたうえ、警報音が鳴る回転灯も使われていなかったことが判明した。
「形骸化してないか」
10月3日の緊急安全講習会には、市内の建設関連事業者や公共工事の発注に携わる市職員ら約200人が参加した。あいさつに立った本村賢太郎市長は「工事を発注した市としても重く受け止めている。このようなことが2度と起こらないように取り組みを進める」と話した。
講師を務めた神奈川労働局の地方産業安全専門官によると、県内では建設業の労働災害が増加傾向にあり、昨年の公共工事等の死亡災害は7人で前年の1人から6人増加したという。講習では「KY活動(危険予知活動)やリスクアセスメントが形骸化していないか」「作業員任せになっていないか」と呼びかけ、「会社の代表者が先頭に立ち、社員全員参加で危険源を洗い出して話し合う必要がある」と強調した。
「判断基準を決める」
相模原市建設関連団体連絡協議会の篠崎栄治会長は「雨がちょっと降ってきて避難しても間に合わないことが今回の事故でわかった。作業中止や避難をどこで判断するのかを各社、業界で決めなければならない」と話した。
篠崎会長が経営する建設会社では、下水道の工事を受注した際に2、3カ月に1度、ハシゴを登ってマンホールから避難する訓練を実施しているという。ハシゴを登るときは他者を巻き込みながらの転倒を避けるため一人ずつしか登れないと指摘した上で「現場では降雨によってハシゴが滑りやすくなっているためさらに時間がかかる」と対策には難しい課題があることを吐露した。
市は今後、委員会を設置し、事故の原因究明や安全対策について検討する体制を整えるとしている。