医療従事者のコロナ戦記 元県医師会副会長が出版

2025/07/03

書籍を手にする竹村さん

 元神奈川県医師会副会長で竹村クリニック(旭町)の理事長の竹村克二さんが今年3月、新型コロナウイルス感染症下の医療現場を記した著書「かながわコロナ戦記」を出版した。竹村さんは「医療従事者がコロナにどのように対峙してきたのか。その事実を記録し、伝えたい」と思いを語る。

 竹村さんが神奈川県医師会副会長を務めたのは2019年6月から23年7月まで。就任半年を過ぎた頃、新型コロナウイルスに直面した。

 20年1月には国内1例目の患者が市内病院で発生。2月には横浜港に帰港したダイヤモンド・プリンセス号でコロナ患者が大量発生する重大事件が起こるなど、国の対策が未整備のまま、全国に先駆けて新型コロナウイルス対策に取り組むことになった。

 「ほぼ毎日」行われていた会議の膨大な資料をもとに、県医師会会長や国立病院機構相模原病院の病院長、相模原協同病院や市保健所など、当時の院長や所長に取材。現場での診療や医療体制構築に向けて、どのように判断し対応していったのかを詳細に記している。

批判受け「事実伝えたい」

 竹村さんは副会長を降りてから約1年半かけて執筆。そのきっかけとなったのが「医療体制に対する当時のマスコミ批判と医療者家族への差別だった」という。

 とりわけ大きかったのはPCR検査の少なさへの批判。書籍には「当時韓国と比べ、PCR検査が日本では十分に行われていないことに対する批判が盛んにあった」と記載している。

 県医師会では「入院体制が整わないままPCR検査を拡大すべきではない」との方針を打ち出していた。竹村さんは「テレビでは的外れとも感じる批判も多かった。でも反論する場がなかった」と振り返る。20年10月、神奈川県はコロナの診療体制をほぼ完成させた。竹村さんは「今振り返っても、対応は間違いではなかった」と断言する。

 また、医療者の子どもが学校で差別を受けたことも強く憤りを覚えた。「我々が現場でコロナと真摯に戦ってきたことを書籍を通して、伝えていきたい」と語った。

 「かながわコロナ戦記」は定価1600円(税別)。Amazonなどのオンラインで購入できる。

ニュース提供元:株式会社タウンニュース社