矢部駅から歩いて数分の場所にあるパン屋さん「フッセン」。

　お店のドアを開けると、懐かしさと温かさに満ちた“まちのパン屋さん”の光景が広がります。

　切り盛りするのは永山力さん親子。１９５５年の創業以来、子どもから大人まで幅広い層に支持される美味しいパンを提供し、地域から愛され続けています。

　「素朴だけど毎日飽きないパンを作りたいね。皆さんの生活の中に溶け込む、そんな存在っていいと思うね」と話す永山さん。角食やフランスパンのほかに、総菜パンにも力を入れており、店頭に並ぶパンはどれも”ちょっと大きめ”。のせてあるハムや玉ねぎなどの具材もすべて手作りで優しい味わいです。「部活帰りや、育ち盛りのお子さんたちにもお腹一杯食べてもらいたくてね」とパン屋さんならではの優しさをのぞかせます。聞けば、何十年来のお客さんも珍しくなく、親子三代で通うファンもいるのだとか。「ありがたいよね。本当にパン屋冥利に尽きるよ」と嬉しそうに微笑みます。

　永山さんの趣味は旅行。店内にはこれまで忙しい仕事の合間を縫って出かけた、各国の名所の写真がズラリと飾られています。これまでにインドやマレーシアなど様々な国に出かけたそうです。カメラも大の得意とのことで、旅先では毎回たくさんの写真を撮影しています。「中には（店に）飾ってある写真を褒めてくれるお客さんもいてね。話が弾むんだよ」と永山さん。お客さんとの楽しいひと時は今も店頭に立つモチベーションのひとつになっているそうです。

　お店の隅には、開店当時に店頭で活躍していたパン屋さん人形がひっそりとたたずんでいます。「だいぶ古くなってしまったけどね。私も古くなってしまっているから丁度いいか（笑）。これからもできる限り店頭に立って美味しいパンをお届けしたいね」。

子どもの頃に食べたあの味、夕暮れに買い食いしたあのパン、懐かしいパンに出会いにぜひ足を運んでみては。

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