西門商店街の文房具店「菊屋浦上商事」には、世界でも珍しい「左利き用グッズコーナー」があります。ハサミや定規はもちろんのこと、包丁やおたま（レードル）などの調理用品まで、様々な左利き用に設計されたグッズを取り扱っています。

　きっかけは、現在同社の代表を務める浦上裕生さんの弟さんが中学生の時にカッターで大けがをしたことでした。「一般的なカッターは左利きの人が使うと刃の切れる側が自分の方に向くことになり、実は危険です」と浦上さん。「弟の怪我を受け、母が『きっと他にも困っている人がいる。そういう人のために特別にコーナーを作ろう』と話し、店頭にレフティグッズコーナーを設け、小さいながらも本格的な取扱いを始めることになった」と説明します。

　浦上さんのお母さんのアイデアは、ネット通販でも花開きます。「インターネットの普及でネット通販が台頭してきた時代に母がレフティグッズをネット販売（※現在は店頭販売のみ）でも取り扱うべきと話しまして、HPに載せたところ、多くの注文が殺到しました。嬉しさのあまり、購入した理由を電話で聞いた浦上さん。理由は「さんざん探したが他にどこも売っていなかったから」だったそうです。浦上さんは「これだと思いましたね」と振り返ります。文房具店は通常、仕入れた物を売る商売で、他店と差別化がしづらいのが課題でした。「他所にないものを売ることで差別化ができる」と考えました。

　「左利き用グッズコーナー」を通して、口コミが広がり様々なメディアにも取り上げられるようになった同店。左利きの人からの相談が増え、左利きのネットワークも生まれ、取り扱うレフティグッズも増えたそうです。

　浦上さんは「これからも地方の小さなお店にしかできない品揃えや、かゆい所に手が届くサービスを提供したい。ここにしかないからこそ、お客さんが来てくれる。それが回りまわって、地域を盛り上げることにつながれば嬉しい」と前を見つめました。

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