美味と冒険を提供し、地元を盛り上げる洋食店
ハックルベリー・フィンと言えば、アメリカの作家、マーク・トウェインによる『トム・ソーヤの冒険』で主人公、トム・ソーヤのよき相棒として登場する少年です。自由な生き方を貫き、トムの冒険を盛り立てるハックルベリー・フィン。そんな少年の名を冠しているのが、津久井湖のほど近くに建つログハウスのレストラン、ハックルベリーです。
このログハウス、なんと先代オーナーの手作り。秋田の親戚を訪ねて1 本1 本選び抜いた木や、近所で見つけた不思議な形の木など、様々な木材にこだわって使っているほか、ジャガイモやタマネギをモチーフにしたガラス、あえて未完成のままにしている暖炉など、先代の思いが随所に詰め込まれています。ハックルベリー・フィンが作中で暮らしたツリーハウスを彷彿とさせるログハウスは、完成(暖炉以外)までに4年かかったとのこと。
「一番の売れ筋はビーフシチューですね。1992年の創業から変わらないレシピで、3日間かけて作っているんです」
そう教えてくれたのは、父の跡を継ぎ、現在2代目を務める宮嵜太樹さん。実は弟さんと一緒にハックルベリーファームという畑も作り、タマネギやジャガイモ、キュウリなどの野菜作りもしています。そしてハックルベリーファームで育てているものの一つが、津久井在来大豆。相模原市と合併して津久井町という地名がなくなってしまった当時、ハックルベリーでは津久井在来大豆をドライカレーに使用していました。そんな折、宮嵜さんが留学先のインドネシアから帰国。かの地で出合った大豆発酵食品、テンペを津久井在来大豆で作ろうとレシピを開発し、インドネシアにも似た味わいのテンペを生み出すこととなりました。
現在、津久井在来大豆を使ったテンペは、テンペカツやカツカレー、野菜ミートパスタなどに使用されていて、ベジタリアンの人や肉にアレルギーがある人にも喜ばれているそうです。
テンペを開発し、6次産業として発展させている宮嵜さんは、その動機を「津久井という名前を残したかった」と話します。また、「できるだけ地元に貢献したいんです」と。
実は宮嵜さん、観光協会や商工会、JA青年部などに働きかけ、相互のつながりを強めたり、地域包括センターの認知症カフェ「まんまる えがお」に定期的にスペースを提供したりと、地域貢献に積極的に取り組んでいます。
「ウチの店だけが盛り上がればいいとは思っていないんです。ハックルベリーに来てくれるお客様は、津久井湖へ行ったり、キャンプや釣りをしたりと周辺にも足を運びます。だから、点ではなく面で盛り上がれば、継続的に地域が盛り上がっていくと思うんです」
地元を盛り上げたい、いろんな人の「冒険」の手伝いをしたい、という宮嵜さんの熱い思いは、様々な人に伝播してきました。ハックルベリーの店内や駐車場ではこれまでマルシェやハンドメイドマーケット、伝統工芸の職人によるワークショップ、ミュージシャンによるコンサートなど、様々なイベントも催されてきました。
ハックルベリーの魅力を問うと、宮嵜さんは答えました。
「料理も、建物も自慢だけれど、ここはただご飯を食べるだけの場所じゃないって知ってほしいかな」
──シチューと冒険を売る店──というモットーを掲げるハックルベリー。訪れてみたら、美味だけではなく、新しいワクワクが待っているかもしれません。まずは足を運んで、未完成の暖炉の前でスタッフに聞いてみてください。「なぜ暖炉は完成していないのか」と。その理由に込められた先代の思いに、きっと冒険心がうずいてしまうでしょう。
店名 | ハックルベリー |
住所 | 相模原市緑区城山4-2-10 |
TEL | 042-782-7700 |
営業時間 | 平日11:00~15:00(L.O.14:30)、土日祝11:00~21:00(L.O.20:30) |
定休日 | 水曜(祝日の場合営業) |
HP | https://xn--8mrr73cz7i.shop/shop/huckleberry |
駐車場 | 15台 |